IT契約・法務のメモ

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リスティング広告管理業務委託契約の履行にあたり秘密保持義務違反が問題となった事例

東京地判平成26年5月8日

【事案の概要】

「本件は,原告が,インターネット広告の管理業務を委託した被告Y1株式会社(以下「被告会社」という。)が原告の秘密情報をインターネット上に流出させたことによって損害を被ったと主張し,被告会社に対し,債務不履行に基づく損害賠償として306万0750円及びこれに対する請求の日の翌日である平成25年4月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を,被告会社の代表取締役である被告Y2に対し,不法行為又は会社法429条1項に基づく損害賠償として306万0750円及びこれに対する不法行為(情報流出)の日である平成25年1月4日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求めた事案である。」

 【判旨】

「被告会社は,本件委託契約に基づきリスティング広告を最適な状態で管理運営するために,原告から提示を受けた基礎情報を参考にしたものと認められ,本件情報が本件委託契約締結直後のリスティング広告の配信リポートであることに鑑みれば,本件情報には,基礎情報に含まれていた原告の機密情報が相当程度反映されていると推測される。加えて,被告会社ないし被告Y2の作成に係る経過報告書には,本件情報流出行為の対象となった情報には原告の機密情報が含まれていることが明記されていること,本件情報流出行為が発覚した後,原告において,新たな広告手法の構築を検討していることを総合的に考慮すれば,本件情報は,被告会社が本件契約に基づいて守秘義務を負うべき秘密情報に当たり,本件情報流出行為は,同契約に違反するものといわざるを得ない。したがって,原告会社は,本件契約に基づき本件情報流出行為によって生じた原告の損害を賠償すべき義務を負う。」

本事例では、原告はリスティング広告の管理業務を被告に委託するにあたり、秘密保持契約(以下「本件契約」といいます。)を締結した上で、リスティング広告に係るキーワード、クリック数、表示回数、クリック率、平均掲載順位、クリック単価、コスト、資料請求数、広告文等の情報を被告に提供しました。

ところが、被告は自社のメールサーバーのメンテナンスの際に、誤ってリスティング広告1ヶ月分の配信レポート(同月におけるキーワード、クリック数、クリック率、平均クリック単価、コンバージョン数、コンバージョン率、コンバージョン単価、平均掲載順位等が含まれている)をインターネット上に公開してしまい、情報流出が発生しました。

裁判所は、流出した情報について、「原告の同業者が,現実に本件情報を閲覧したのか,閲覧したとして,当該業者の広告手法にどの程度有利な影響を与えたかは明らかではない」としつつも、「インターネット広告においては,些細とも思われる情報が,それまでの手法の優位性に影響を与え得ることは否定できず,少なくとも,原告が,これまでの手法を維持することによって効率的な集客をすることはできないと判断したことについて,合理的な理由がないということもできない。このような事情を考慮すれば,原告が,新たな広告手法を開発し,そのサイト管理のために支出を余儀なくされた費用について,本件情報流出行為による損害と認めることができる。」として検索エンジン最適化対策に関する費用の損害賠償請求を認容しました。