IT契約・法務のメモ

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システム開発請負契約準備段階におけるベンダの信義則上の注意義務違反が認められなかった事例

東京地判平成17年3月28日

【事案の概要】

本件は,原告が,被告に対し,主位的に,コンピュータ・システムの開発を請け負う旨の契約を被告から解除されたことにより損害を被ったとして,民法641条に基づく損害賠償を求め,予備的に,上記契約の準備段階における被告の信義則上の注意義務違反に基づく損害賠償を求める事案である。

【判旨】

本件の事実関係については前記第2の1及び前記1において述べたとおりであって,原告と被告とが本件システム開発の請負について相当具体的な交渉,協議を行ったことは確かであり,被告の担当者であるEが原告に発注したいとの意向を示していたことも一概には否定できないものの,①被告が原告を含む3名からの提案を比較して契約締結の判断をすることが前提となっていたこと,②被告の担当者が原告に発注すると明確な発言をしていたとは認められないこと,③本件メールは,一定の条件を満たせば原告に発注する旨のものであるが,当該条件が満たされるまでは契約締結を留保するという趣旨に理解されるものであること,④同月11日の打合せについて,被告との間で,原告が有償の作業に入る節目となるような特別の位置付けが与えられていたとは認められないこと,⑤上記①ないし④によれば,原告においても,被告との間で本件システム開発についての合意が成立していないことは認識し得たこと,⑥同日以降の作業は原告の主導の下に行われ,被告の担当者において有償となる作業を要請したような形跡がなく,また,原告からも被告に対して同日以降は有償の作業に入る旨を明確には説明していないこと,⑦被告が原告提示の見積額の上昇に納得できずその提案を断ったなどの経緯について,不当というべき事情もうかがわれないことなどの諸点に照らせば,被告が原告との契約締結の交渉過程において信義則上の注意義務に違反する行為を行ったとは認められず,他にこの点を左右するまでの主張,立証はない。原告の前記(1)の主張は採用することができない。