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企業法務、経営、IT・ネットの法律問題についての雑記

チャットワークのログに対する文書提出命令が認容された事例

知財高決平成28年8月8日

【文書目録】

被控訴人兼附帯控訴人が「神獄のヴァルハラゲート」との名称のソーシャルアプリケーションゲーム開発時に使用したサービス「チャットワーク」のチャットログ(チャットのやりとり)のうち,平成24年10月20日から平成25年3月4日までの間の,「企画」と名付けられたグループ(チャットルームともいう。)のチャットログ

【決定要旨】

 本件文書は,相手方が,本件ゲーム開発のためにコミュニケーションツールとして,導入したチャットワーク上でのやりとりが記載されたチャットログのうち,「企画」と名付けられた本件チャットグループに関するものであり,相手方代表者と社員及び本件ゲームの開発者は,本件チャットワーク上で意見交換及び指示連絡等をすることにより,本件ゲームの企画や内容等について協議をし,作業を進めて,本件ゲームを完成していったものである。そして,本件文書は,法令によってその作成が義務付けられたものでもなく,IDとパスワードにより管理されて外部からのアクセスが制限されていたものである。
 したがって,本件文書は,専ら相手方内部の者(相手方代表者と社員及び本件ゲームの開発者)の利用に供する目的で作成され,それ以外の外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると,一般的には,相手方におけるゲーム開発の遂行が阻害され,また,相手方内部における自由な意見表明に支障を来し相手方の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして,特段の事情のない限り,「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解すべきである。

裁判所は本件チャットワークのチャットログは特段の事情がない限り自己利用文書(民訴法220条4号ニ)に該当するとした上で、本件では特段の事情があるとして、チャットログの提出命令を下しました。

本件で特段の事情が認められることの根拠として裁判所は、次の点を指摘しています。

  1. 申立人がチャットグループの記録の利用関係において所持者である相手方と同一視することができる立場にあったこと
  2. 申立人及び代理人弁護士が目的外利用・漏洩しない旨の誓約書を出していること
  3. 相手方としても,本件ゲーム開発時に作成された別のチャットログを既に相手方の主張を裏付ける証拠として提出していること

このうち重要なのは1で、申立人がゲームの開発当時、主要メンバーの一人として本件チャットグループに参加しており、既にチャットログに記載の申立人自身の発信や他のメンバーの発信は申立人の知るところとなっていたことがポイントになります。