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インターンシップ名目での採用も求人情報サイトの報酬発生要件の「採用」にあたるとされた事例

東京地判平成28年11月11日

【事案の概要】

本件は,求人情報の提供を目的とするウェブサイトを運営する原告が,同ウェブサイトに係る原告のサービスを利用する契約を締結した被告が同サービス料の支払要件となる応募者の採用を行ったにもかかわらず,原告に対し不採用の報告をしたと主張して,被告に対し,同サービス料29万0304円及び違約金100万円並びに遅延損害金の支払を求めた事案である。

【判旨】

本件規約における「採用」(に)ついては,各求人企業が募集する内容での労働契約を締結した上で勤務したことをいうのではなく,各求人企業と応募者が労働契約を締結した上で応募者が「初出社,初勤務(研修を含む)」したことで足りると解するのが相当である。

求人情報サイトの事例です。

被告は、本件求人情報サイトシステムに沿って応募した応募者をインターンシップ・社内研修の名目で5日間勤務をさせたものの、最終的に不採用としています。そのため、被告は報酬発生要件である「採用」はされていないとして報酬の発生を争いました。

たしかに、被告の応募者に対する対応は、一般的な意味での「採用」にはあたらないように思えます。

しかし、原告の利用規約には「採用」について次の定義規定が置かれており、被告はこの利用規約に同意していました。

採用とは,採用の職種,雇用形態を問わず,応募者が初出社,初勤務(研修を含む。)を行うことをいう(5条2項)。

そのため、裁判所は「被告は,本件応募者を,5日間,被告の業務に従事させ,その時給及び交通費として4万8600円を支払ったというのであって,これに先立ち,被告と本件応募者との間で,本件応募者が,被告の指揮命令下で働き,これに対し被告から賃金の支払を受けるという合意(労働契約)が成立していたことが認められる。そして,本件応募者は,当該合意に基づき,被告において勤務を行ったのであるから,上記の定義における「応募者が初出社,初勤務(研修を含む)を行うこと」に形式的に該当するものといえる。」とし、報酬の発生を認めました。

なお、違約金の発生についても争われていたところ、違約金の規定は次のような内容となっていました。

原告が本件システムにより原告を通して応募した応募者を採用したにもかかわらず,過失によるものではなく故意により,原告に対し不採用と回答した場合(以下「隠ぺい行為」という。),被告は,原告に生じた損害金の支払とは別に,違約金として,隠ぺい行為がなければ支払われていたと推定される金額の50%(その額が100万円に満たないときは100万円)を支払う。

裁判所は、本規定の趣旨を「上記条項は不当にサービス料の支払を免れようとすることに対する制裁を科す趣旨である」とし、本規定の「過失によるものではなく故意に」の要件について「各求人企業が,サービス料(成功報酬)が発生する場合であることを認識しながら,これを隠して支払を免れる意図で不採用の報告をすることを意味する」と解釈しました。

本件事例では、原告への応募者への対応が一般的な意味での採用とはいえないこと、原告が被告のサービスを本件以前から利用し採用の報告をしてきたことから、「過失によるものではなく故意に」とはいえず、違約金は発生しないとしました。