会社法の一部を改正する法律案が本日成立しました。上場会社等の社外取締役設置の義務化などが盛り込まれていますが、実務上は既にほぼ全ての上場企業等で社外取締役が設置されています。
改正案の概要
- 株主総会資料の電子提供制度
- 株主提案権
- 取締役の報酬等
- 補償契約
- 役員等のためにされる保険契約
- 業務執行の社外取締役への委託
- 社外取締役の設置義務
- 社債の管理
- 株式交付
- 責任追及等の訴えに係る訴訟における和解
- 議決権行使書面の閲覧等
- 会社の登記に関する見直し
- 取締役等の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備
株主総会資料の電子提供制度
上場会社等に株主総会資料の電子提供制度の利用が義務付けられます。
株主提案権
・株主が同一の株主総会において提案できる議案の数を10に制限
・次の場合に株主提案権を制限
1.株主が、専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、若しくは困惑させ、又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的の場合
2.株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合
取締役の報酬等
上場会社等に取締役の個人別の報酬等の決定方針の決定が義務付けられます。
また、金銭でない報酬(当該会社の募集株式、募集新株予約権、それらの払込みに充てるための金銭、それら以外)についての株主総会の決議事項が明確化されます。上場会社については、その場合において募集株式の取得、新株予約権の行使にあたっての金銭の払込みを要しないことが認められます。
補償契約
株式会社が役員等に対して次に掲げる費用等を補償する契約の内容を決定するには、取締役会の決議(取締役会非設置会社は株主総会の決議)が必要とされます。
1.当該役員等が、その職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用
2.当該役員等が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失
(1)当該損害を当該役員等が賠償することにより生ずる損失
(2)当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員等が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失
役員等のためにされる保険契約
役員等賠償責任保険契約の内容を決定するには、取締役会の決議(取締役会非設置会社は株主総会の決議)が必要とされます。
業務執行の社外取締役への委託
株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該株式会社は、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができるとされます。
この場合、業務執行を委託された社外取締役は、当該業務執行により社外性を失いません。
社外取締役の設置義務
上場企業等について、社外取締役を設置することが義務付けられます。
社債の管理
社債管理補助者制度が新設されます。
株式交付
株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付する株式交付制度が新設されます。
株式交換との違い
・子会社となる株式の一部のみの取得が可(株式交換は全部)
責任追及等の訴えに係る訴訟における和解
株式会社等が、当該株式会社等の取締役(監査等委員及び監査委員を除く。)、執行役及び清算人並びにこれらの者であった者の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解をするには、次の者の同意が必要とされます。
監査役設置会社→各監査役
監査等委員会設置会社→各監査等委員
指名委員会等設置会社→各監査委員
議決権行使書面の閲覧等
株主が議決権行使書面の閲覧請求をするには、当該請求の理由を明らかにしなければならなくなり、また一定の拒絶事由を設けることとされました。
会社の登記に関する見直し
1.新株予約権に関する登記
募集新株予約権について無償発行でないときは、原則として募集新株予約権の払込金額を登記しなければならないものとされました。募集新株予約権の払込金額の算定方法を定めた場合において、登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは、当該算定方法を登記することになります。
2.会社の支店の所在地における登記
会社の支店の所在地における登記が廃止されます。
取締役等の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備
成年被後見人、被保佐人を取締役・監査役の欠格事由とする規定が削除されます。